【上野精養軒】
◆食の文明開化◆
 当店の史料の中に、明治12年7月、伊藤博文公が前アメリカ大統領のグラント氏をお招きになった午餐の献立表がございます。
最初に登場するのは、コンソメスープです。続いて羊、鶏、牛、鶉の4つの肉料理が並び、付け合わせと思われるアスパラガスの名が見えます。洋酒のシャーベットがあって、メインは七面鳥の蒸し焼き。そして、デザート。不思議なメニューだと思われませんか。なにしろ、肉料理ばかりです。
このメニューは、当時の日本人コックたちの苦肉の策だったのではないかというのが、私たちの推測です。お好みがわからぬ上に、日本の魚介類がお気に召すという自信もないために、前菜に4種の肉料理を用意して、選んでいただいたのでは……。また、メインの七面鳥などの食材は、グラント氏が乗ってきた船から譲り受けた可能性も大です。
当店は、明治5年に築地に「精養軒」の名で誕生し、上野の店は、その支店として明治9年に開店いたしました。そして、単なるレストランではなく開国日本の文化の高さを内外に見せる文明の窓としての役割を果たしていました。とはいっても、西洋料理は、すべてが暗中模索の時代。華やかな宴席の陰で、かたずを飲んで食事の進み具合を見守っていたコックたちの緊張が、メニューからは痛いほど伝わってきます。
西洋料理
上野精養軒
●台東区上野公園4-58
(JR・地下鉄・京成上野駅から徒歩5分)
●03(3821)2181

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