大旦那のちょっといい話【老舗当主の「襲名」】
 「襲名」といえば、歌舞伎役者や落語家が「市川團十郎」や「三遊亭圓生」といった名跡を継ぐものが知られています。こうした「襲名」は、芸名を継ぐことで、芸や技をも継いでいこうという意気込みを表すもので、襲名披露公演などが賑やかに行われます。ただ、この「襲名」で本名が変わるわけではありません。
 一方、古い商家でも、当主の襲名を行うところがあります。そして、こちらでは、しばしば法律上の名前を変える「改名」を行っています。
 改名は、元の名前が日常生活に大きな支障を及ぼす場合などの理由がなければ認められません。そのため当主が襲名を行う際には、家庭裁判所に、改名する理由を示す資料を添えて申請することになります。
 また、許可がおりて戸籍が変更されると、すぐに法人登記や印鑑証明などの会社関係の書類の変更をはじめ、個人の保険証や免許証からパスポート、キャッシュカードなどまで膨大な改名手続きをしていくことになります。
店名 創業年 襲名した名前 特記
榮太樓總本鋪 (和菓子) 安政4年(1857) 細田安兵衛 (6代/先代) 3代目の名「安兵衛」を継承
山本海苔店 (海苔) 嘉永2年(1849) 山本德治郎 (6代) 初代の名「德治郎」を継承
山本山 (茶) 元禄3年(1690) 山本嘉兵衛 (9代/先代) 初代の名「嘉兵衛」を継承
黒江屋 (漆器) 元禄2年(1689) 柏原孫左衛門 (12代) 2代目の名「孫左衛門」を継承
にんべん (鰹節) 元禄12年(1699) 髙津伊兵衛 (13代) 初代の名「伊兵衛」を継承
越後屋 (呉服) 宝暦5年(1755) 永井甚右衛門 (8代) 初代の名「甚右衛門」を継承
吉德 (人形) 正徳元年(1711) 山田德兵衞 (12代) 6代目の名「德兵衞」を継承
羽二重団子 (団子) 文政2年(1819) 澤野庄五郎 (6代) 初代の名「庄五郎」を継承
宮本卯之助商店 (神輿) 文久元年(1861) 宮本卯之助 (7代) 4代目の名「卯之助」を継承

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