【第二十一回目】
吉徳:まもなく300年。江戸で最古の人形店
こんにちは。老舗のコンシェルジュです。
まずは、写真をご覧ください。2007年の発売時に大きな話題となってテレビや新聞でも取り上げられたので、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、これがウワサの「ダース・ベイダー兜飾り」。人形の老舗、吉徳の商品です。
モデルはいうまでもなく、今年で公開31周年となる映画『スター・ウォーズ』に登場するシスの暗黒卿ダース・ベイダー。もともとダース・ベイダーは日本の甲冑をモチーフにしたとも言われていますから、デザインの逆輸入といってもいいかも?! それにしてもすごい迫力です。5月5日の端午の節句にこれを五月人形として飾ったら、鯉のぼりも金太郎も武者人形もびっくりでしょうね。
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現在、浅草橋に本店を構える人形店「吉徳」が創業したのは、江戸幕府が誕生して100年余が過ぎた正徳元年(1711年)。元禄文化が花開き、まさに泰平の世の中。庶民が諸国を往来することも珍しくなくなって、たとえばお伊勢詣りには年間300万人以上もの人々がでかけたという時代でした。「吉徳」の創業も、そんな平和な世の中を映したものだったのでしょう。それから300年近く、さまざまな時代を見ながら「吉徳」は人形の老舗として長い歴史をつむいできました。
店内に入ってみてください。ひな人形、五月人形などのお節句の人形はもとより、博多人形や御所人形など、いわゆる「日本人形」と呼ばれる人形の名品がずらりと並んで、それは華やかなこと。「顔が命」のキャッチフレーズどおり、気品にあふれた表情が、この店の人形の特徴です。
また、日本における人形や玩具研究の第一人者としても知られた十代目店主・山田徳兵衛が収集した人形資料『吉徳これくしょん』も、圧巻。同社のホームページからも、その充実した収集品の一端を見ることができますが、折に触れて企画展が開かれていますので、機会があればぜひ本店に足を運んでみてください。人形に対する認識が変わるほど深く文化的な考察がされた展示が行われています。
店内をめぐれば、人形が、ぬいぐるみが話しかけてくるよう。初節句の人形を買い求めに訪れる親御さんの姿も多く、幸せそうな光景があちらでもこちらでも。小さな人形に、平和の象徴として、また日本の歳時記をつむぐ使者としての、大きな力を感じさせられます。
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