【第二十二回目】
梅園:浅草の名物甘味
浅草の玄関口「雷門」をくぐり抜けたところから浅草寺本堂へと延びる「仲見世」は、元禄・享保時代(1688~1735)に始まる古い商店街。いつ行っても観光客や参拝客で1年中にぎわっていますが、そのにぎやかな街の一角にあるのが、今日ご紹介する「梅園」。浅草を代表する甘味どころです。
大きな寺や古い神社の周辺に茶店があるのは珍しいことではありませんが、ここもその一つ。創業は江戸末期の安政元年。初代が、浅草寺の別院である梅園院の一隅を借りて茶店を開いたのが始まりで、屋号「梅園」もその縁を伝えています。
名物は「粟ぜんざい」。発売したとたんに東都名物、つまり東京の名物とうたわれて大評判になったそうで、永井荷風の小説『踊り子』にも「梅園でお汁粉をたべようとしたが、満員で入れないので……」などと、その人気ぶりが描かれているほど。
現在はアワではなく餅きびを使って作られていますが、口のなかに広がる独特の弾力となめらかさは、素朴に見えて実に洗練された下町の甘味だとつくづく納得するおいしさです。「しその実」で口直しをしながらいただくと、思わず「もう一杯!」と言いたくなるほど!
店内を見回せばどのテーブルも笑顔でいっぱい。浅草寺のご利益と、おいしい甘みのご利益が、この幸せな風景をつくっているんでしょうね。夏は、抹茶アイスがのったあんみつもおすすめですよ。

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