【にんべん】
◆時代の風と鰹節◆
 当店が鰹節の「フレッシュパック」を売り出したのは、昭和44年(1969)のことです。それからあっという間に、日本のほとんどのご家庭から鰹節削り器が姿を消してしまいました。つまり私どもは、鰹節削り器を日常生活から遠いものにしてしまった張本人(⁈)なのですが、このフレッシュパックこそが日本人の味の原点である鰹節を救ったともいえるのです。
 当時の日本は高度成長期を迎えて、誰もが働くことに生きがいを見出し、家事にかける時間と手間を惜しむようになっていました。料理も「時短」が求められ、レトルト食品やインスタント食品、うまみ調味料が大ヒット。そうしたなかで考えた鰹節の生き残り策が、削りたての鰹節をそのままパックする方法だったのです。
 ところが、それから約50年。日本の暮らしから忘れ去られようとしていた鰹節削り器が、コロナ禍の中で静かなブームを呼んでいます。「ステイホーム」で家族の在り方を見直した時に、食生活を豊かにしたいと考えた方が多かったからでしょうか。そして、削り器で鰹節を削る時の手の感触や音、香りなどにも心が動いたのでしょうか。
日本人の発明した鰹節のすばらしさと、和食のおいしさを未来にも伝えていきたい。当店は今日も、江戸っ子の意気地で時代の風と格闘しています。
鰹節
にんべん
●中央区日本橋室町2-3-1
(地下鉄三越前駅から徒歩3分)
●03(3241)0241

最新記事

    This post is also available in: 英語