【第九回目】
海老屋總本舗:向島の粋人が太鼓判を押す「佃煮」

老舗のコンシェルジュへ、ようこそ。
浅草土産をお探しですか。少し日持ちのするもので?……なるほど。それでは、とっておきの「佃煮」をご紹介いたしましょう。

浅草・雷門から東に歩いて隅田川の方向へ。そのまま「吾妻橋」を渡ってください。左手には、屋上に金色のオブジェが輝くアサヒビール本社。そして右手の角にあるのが、今回ご紹介する佃煮の名店「海老屋總本舗」です。
海老屋總本舗がこの場所に暖簾をあげたのは、明治2年。以来、5代にわたって江戸の味を守り続けてきた正真正銘の老舗です。
実は、その昔はお醤油だけで煮ていた佃煮のタレに、お砂糖を加えることを考えたのが、まさにこの店の初代。そして佃煮に「焼き」の技法を取り入れたのも、この店が最初です。
今では佃煮といえば、お砂糖と醤油があいまった甘辛味が当たり前のようになっていますが、当時はそんな佃煮はなかったのですから、きっと大変な努力と工夫があったのでしょうね。時間を旅することができたら、アイデアマンの初代さんが大鍋の前であれこれ工夫を重ねていた現場を見たいものです。
では、お店に入ってみましょう。店内のショーケースには常時40種類ほどの佃煮が並んでいます。
小エビ、はぜ、こうなご、かつおでんぶ、しそ昆布、しじみ、椎茸……。「あれもおいしそう、これもおいしそう」。目移りばかりしてどれにしようか迷われたら、どうぞ店員さんにご相談を。きっと、旬のおいしいところを紹介してくれますよ。
でも、それでも決めかねたら?……そうですね。私でしたら「たらこ」と「細切り昆布」をおすすめします。甘すぎず、辛過ぎず、酒の肴になるのはもちろん、ご飯のお惣菜にするとおかわり必至のおいしさです。
料亭が集まる街・向島で、粋人の難しい要求にも応えてきた味わい。口の肥えたグルメの方々への贈り物にも、きっと喜ばれると思いますよ。

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