【にんべん】
◆時代の風と鰹節◆
 当店が鰹節のフレッシュパックを売り出したのは、昭和44年です。それからあっという間に、日本のほとんどのご家庭から鰹節削り器が姿を消してしまいました。いわば私どもは、鰹節削り器を遠いものにしてしまった張本人(?!)なのですが、このフレッシュパックこそが日本人の味の原点である鰹節を救ったともいえるのです。
と申しますのも、当時の日本はモーレツ時代へと走り出した時期で、人々は料理にかける時間と手間を惜しむようになっていたのです。鰹節がインスタント食品やうまみ調味料に対抗できる唯一の生き残り策が、香り高い削りたての鰹節をそのままパックするという発想の転換でした。
あれから約30年。当店がいま力を入れている「和食倶楽部」は、鯖の味噌煮などを真空パックにした調理済み冷凍食品です。つまり、さらに調理を単純化、簡略化した便利商品。ただ、この商品では、あえて電子レンジではなく、袋ごと熱湯で10分間煮ていただくという手間をお願いしています。その方が、各素材の風味が生きるという思いから……。
日本人の発明した鰹節のすばらしさと、和食のおいしさを未来にも伝えていきたい。鰹節の老舗は、江戸っ子の意気地で時代の風と格闘しながら、創業302年目の秋を迎えています。
鰹節
にんべん
●中央区日本橋室町2-3-1
(地下鉄三越前駅から徒歩3分)
●03(3241)0241

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