【神茂】
◆”かんも”と「すじ」◆
 当店の看板商品は半ぺんと蒲鉾ですが、そのほかの名物として”すじ”がございます。半ぺんはサメを主原料として作るのですが、その副産物として大量に出るのが軟骨や身のついた”すじ”。これをミンチにし、少量の食塩とつなぎの澱粉を加えてすり、すだれで巻いて茹でたものを商品としてお出ししているのです。手前味噌になりますが、これがおでん種にするとなかなかおいしく、歯ごたえの楽しさもあって、おもに冬の間だけ販売しているのです。
ところで、歌舞伎界では若手でちょっと筋のいい役者が出てくると、
「あの野郎、ちょいとカンモだねえ」という言い方をするのだという話を梨園のかたから伺いました。うちの”すじ”と、素質があるという意味の”筋”をかけた梨園ならではの粋な隠語。いつ頃、どなたが言い始められたのかもわかりませんが、ありがたいことです。
“すじ”は、元はといえば余り物を利用できないかと工夫した商品。また、現在でも決して主力商品ではありません。けれど、そうした脇役にもちゃんと目をかけてくれているファンがいたことを、思いがけない形で知ることになったのです。
この先も、「すじがいい」と言っていただけるように精進を積まなければ…。背筋が伸びる思いでございます。
はんぺん
神茂
●中央区日本橋室町1-11-8
(地下鉄三越前駅から徒歩5分)
●03(3241)3988

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