◆歌舞伎の足袋◆

 本日は歌舞伎役者さんの足袋についてお話しいたしましょう。
 まずは、採寸です。当店の注文足袋は、足が細くきれいに見えるように、底を狭くとり、爪先から足首までをきりりと包み込むように作ります。そこで、最初のご注文時には足裏の幅や足首まわり、甲の高さなど5箇所ほどを計らせていただきます。出来上がると、実際に履いていただいて、こはぜを受ける掛け糸の位置を変えるなどの細かい調整をします。これが基本ですが、早変わりをなさる場合は、こはぜではなくマジックテープも活躍します。
 また、歌舞伎で使う足袋は、一般に派手な色の生地を使います。照明が当たると色は飛んでしまうので、たとえば客席で桜色に見えたら、実際はショッキングピンクに近い色といった具合です。それから、演目が古い時代を扱ったもの、たとえばヤマトタケルだとしたら、足袋はどんな形になると思われますか?
 足元がスリッパ型の靴ですから、足袋は靴下型。つまり、親指のところで二股に分かれていないものを使うんです。
 旅立ちの場面では紐足袋が登場します。足袋の紐を結ぶことで、旅立ちの感じが増すというわけですね。
 ちなみに絵に描いてもらった紐足袋の柄はトンボ。トンボは「勝虫」とも呼ばれていて、縁起がいいんですよ。
 次回、歌舞伎をご覧になるときには、どうぞ足元にもご注目を。


足袋・和装雑貨
大野屋總本店
●中央区新富2-2-1
(地下鉄新富町駅から徒歩3分)
●03(3551)0896

挿絵


◆銀座の雑煮◆

 当店は明治27年に汁粉屋として始まり、以後、あんみつなどのメニューを加えながら甘味屋として商ってまいりました。まさしく甘いもの中心の店なわけですが、地味ながら一年中コンスタントに出る甘くない人気メニューもあります。それが、「お雑煮」です。
 私どものお雑煮は、塩だけで味をつけています。お醤油を使いませんから、その分、だしは上質の昆布とたっぷりの鰹節で濃いめにとります。餅は切り餅を焼いて入れ、具はかまぼこ、たけのこ、三つ葉。そして、柚子を散らして香りを添えています。卵入りの「玉子ぞうに」も人気がありまして、最後に溶き入れる卵を浮き雲のように柔らかく膨らませて仕上げるのがコツ。卵を入れ、ふわっと沸き立ったところで、すぐに火を消すのがポイントです。よろしければ、お試しください。
 お雑煮は、女性客の多い店に男性を呼び込む役目も果たしてくれています。閉店間際に、一人でふらりと入って来られる方も多く、銀座という土地柄、飲む前にちょっとした腹ごしらえをされているのかもしれません。接待役ともなれば、自分はそうそう食べていられない企業戦士たちの自己防衛でしょうか。夕方の銀座の甘味屋は、ちょっと切ないようなほのぼのとしたような空気の中で暖簾をしまい始めます。


汁粉
若松
●中央区銀座5-8-9
(地下鉄銀座駅から徒歩2分)
●03(3571)1672

挿絵