【老舗のよもやま話】 ◆食通の食べ方◆

senbei
 平成時代のお話です。ある日、お客様から「いつもの煎餅と違う」とのお小言をいただきました。実は長く勤めた職人が退職したばかり。ドキリとしながら詳しくお話をうかがうと、そのかたが変わった召し上がり方をされていることがわかりました。なんと、煎餅を買ったら袋を開けて3日程おき、わざと湿気らせて召し上がっているというのです。お小言は、その湿気具合が違う、ということだったのです。
 名文章家にして大美食家として知られる内田百閒も、決まりきった食べ方が嫌いでした。たとえば、おからはスプーンの背で押して小山の形に固め、酢やレモン汁をかけて、しばらくおいてから食べたそうです。 味の好みは、ほんとに人それぞれですね。
 ところで、歌舞伎座近くに移転した銀座松崎煎餅本店「MATSUZAKI SHOTEN」のカフェで人気の「松崎ろうる」は、やわらかい瓦せんべいで生クリーム、黒蜜寒天、きなこクリーム、粒餡、よもぎ団子をふわっと包んだ和風スイーツです。秋には栗バージョンも加わって、こちらもなかなかの人気です。
湿気た煎餅が好きなあのお客様にも、へんくつグルメの百閒さんにも、「松崎ろうる」を食べて感想をうかがってみた思う今日この頃です。
◎MATSUZAKI SHOTEN(銀座松崎煎餅 本店)  東京都中央区銀座4-13-8   TEL.03(3561)9811