【第三十九回目】
新橋 玉木屋:“名物”を作り続ける佃煮屋

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最近では日本食が好きなの外国人も珍しくなくなってきましたが、寿司が世界中でブームになっている理由の一つに、外国人にも違和感のない「温度」ということがあるそうです。
実は、外国で主食が炊き立て(焼きたて)ほかほか……という国はそう多くないのです。もちろんパンやナンも作りたては熱々ですが、その熱さ、温かさを保持して食べるわけではありません。また米を主食としている国でも、日本ほど炊き立てにこだわる国はあまりありません。主食が温かい、というのは日本食の大きな特徴なのです。
しかも、日本の食べ物は、温かいご飯を前提に作られているおかずや食材がたくさんあります。生卵、焼き海苔、塩鮭などの朝食のおかずの定番は、まさにそうですし、忘れてならないのが佃煮。今日は、そんな佃煮を3世紀に渡って作っている老舗「玉木屋」をご紹介しましょう。

「玉木屋」は1782年に、現在も本店を置く場所、銀座通りと昭和通りの交差点――に創業した江戸から続く老舗です。店の名は、初代が越後の国・玉木村の出身だったところから。禅寺の住職の話から思いついて、黒豆を砂糖味で炊き上げた煮豆を作り、「座禅豆」と名づけて売り出したところ大当たり。創業すぐに、江戸名物と呼ばれるほどの大ヒットを出しました。
また、3代目は佃島の漁師の保存食から着想して佃煮を創案。これで玉木屋の名はいよいよ江戸市中に知れ渡り、お客が店の前に列をなすほどになったといいます。昆布や貝、えびや小魚などの佃煮は今も大人気ですし、鮎やアジ、ニシン、イワシ、サンマなどの姿煮は、味わいの深さとともに、きれいな姿も評判です。

さらに、最近では「いちじくの甘露煮」や「イタリアントマトふりかけ」など、これまでの佃煮屋さんでは見かけなかった斬新なアイデア商品も大ヒットを飛ばしています。
先祖が残してくれた名物を大事に受け継ぎながらも、代々の当主が時代に合わせて新たな名物を作り続けているんですね。
佃煮やふりかけは、日本の炊き立てほかほかご飯を、よりおいしくいただくために生まれたおかず。でも、それを超える名物も、そう遠くない将来、生まれそうです。

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