【第三十四回目】
笹乃雪:夏の贅沢「冷奴」
こんにちは。老舗のコンシェルジュです。
昔から「暑さ寒さも彼岸まで」と言うように、日本では春と秋のお彼岸の頃に、気温が大きく変動するため、暮らし方をちょっと気をつけたり、工夫をしたりしてきました。

たとえば春は重いコートを脱ぎ、秋はカーデガンの1枚も羽織り、食べ物も鍋物が減ったり、酢の物が増えたり……といった具合。よく言われる食材の「旬」とは別に、調理法や味付けなどで四季折々の食事の変化を楽しむというのも、実は世界にそれほど多くはないことなのです。日本って、日々の生活そのものがとても豊かなんですね。

34-aさて、前置きが長くなりましたが、お話したいのは「冷奴」のこと。あんなに湯豆腐がおいしいと思っていたのに、夏が近づくと「やはり豆腐は冷奴で食べるのが一番!」と、しっかり宗旨変え。冷奴が、おかずや酒の肴の常連になっていきます。
その冷奴のおいしさでも評判なのが、豆富料理の「笹乃雪」。
元禄4年(1691)、初代が上野の宮様(後西天皇の親王)のお供をして京都から江戸に移り住み、根岸の地に豆腐を売る茶屋を開いたのが始まりだそうです。

34-b 以来、300有余年。厳選した国産の大豆と良質な井戸水、にがりのみを原料として、当時の製法のままの丁寧な手作り。冷奴は「生笹の雪」の品名で呼ばれていて、かの宮様が「笹の上に積もりし雪のごとき美しさよ」という称えられたとおりの、艶やで清純な白色が特徴です。
たっぷりとした量が盛られて登場、ひと口いただくと……ああ、おいしい! 口福とはこういうことかと、きっと合点されますよ。
34-c ほかにもさまざまな豆富メニューがありますが、とりわけ「あんかけ豆富」は文人墨客にも愛されてきた店の名物。大豆のおいしさを生かした味わいです。
暖簾をくぐったとたんに「いらっしゃいませっ」と、明るい声とともに下足番が駆け寄るようにお出迎え。下町風のもてなしもご馳走です。

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