【第二十回目】
日本橋弁松総本店:頑固でおいしいお弁当
今年のお花見はどちらへ? 上野? それとも隅田川畔でしょうか。
「人が多い」の、「風が寒い」のと文句を言いつつも、やっぱりお花見散歩は心が浮き立ちますよね。「あー、日本はいいなあ」なんて毎年、同じことを言ったりして。
ところで、花の下でお弁当をひろげて……ということでしたら、とっておきのお弁当屋さんをご紹介しましょう。「日本橋 弁松総本店」、デパートの食料品売り場でもおなじみですが、本店は日本橋にあります。
文化7年、日本橋の魚河岸に小さな食事処としてオープンしたのが、この店の始まりです。いまの築地市場の場内にある飲食店、あんな感じでしょうか。早朝から魚を売りに来た漁師やら仲買人やらが腹ごしらえに押しかけ、かきこむように食べて出ていく繁盛店。
あまりに忙しくて食べきれずに席を立つお客に、残った料理を竹の皮などに包んで持ち帰らせると、これが大好評。そこで、あらかじめ持ち帰り用の弁当を用意するようになった――。これが日本で最初の「折詰料理」専門店誕生のお話。なんだか時代劇を見ているようですね。
ところでこの店のお弁当の味は、「甘辛、濃い目」が身上。よく働き、よく遊ぶ江戸っ子好みの味は、いまの「素材を生かしたヘルシーな薄味」とは正反対。ところが、やっぱりお弁当にはこの甘辛、濃い目が合うんですね。
名物のメカジキの照り焼きの味付けなどは、もう感動の域に達するほど。野菜の甘煮も、こっくりと煮込んでいながら適度に歯ごたえがあって、ご飯のおかずはもちろん、酒の肴にもよく合うんです。そして、白いご飯も、お赤飯も上等!
江戸の味をそのままに、と頑固一徹の折詰弁当。ふわりとやさしい折箱の木の香りが、なによりのご馳走です。
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