【第十五回目】
松崎煎餅:華やかさと繊細さと親しみやすさを食べる「おせんべい」
銀座の並木通り沿い。松崎煎餅さんのビルが見えると、ホッとします。銀座散歩は楽しいのですが、色や音の洪水でなんだか少し疲れて……なんて時、私は、この店の2階にあるお茶席にうかがって、お抹茶と季節の和菓子で一服します。
フロアに、なんともゆったりとした落ち着きと開放感があるからでしょうか。他のお客さまの表情もやわらかで、ほのぼのとされていて、「ああ、銀座だなー」ってしみじみ思います。
松崎煎餅はデパートにもたくさん入っていますが、和菓子があるのはこの本店だけ。そんなことも、ちょっと嬉しかったり……。
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15-cところで今日は、私の「とっておき」をご紹介したいんです。煎餅作りの歴史の結晶、なんていうと他のお煎餅たちからにらまれそうですが、これはすごい!と感嘆したのが「絹衣」というお煎餅。
ほんとに薄くて、ほんとに軽い。口に入れるとすーっと舌の上で溶けていくほどの繊細さです。それなのに、角が痛いほどピンとしていて、噛むとしっかりカリッと歯ごたえがあって、もち米のおいしさが広がって……。
「絹衣」は湿気やすい上、大変壊れやすいので缶入りで売られているんですが、その風情も、とてもおシャレで、おつかい物に最適です。どこへ持っていっても、いいセンスしているなって思っていただけますよ。(本当にあっという間に表面が湿気を帯びてきますので、食べる分だけ出して、すぐに缶のフタを閉めてくださいね)。
15-b「松崎煎餅」をご存知ない方もいらっしゃると思いますので、代表銘菓もご紹介しておきましょう。瓦せんべい「三味胴」と瓦せんべい詰め合わせ「季節の楽しさ」。
(「季節の楽しさ」には、「三味胴」と、丸型の瓦せんべい「三寸丸」が入っています)
瓦せんべいは全国に数々ありますが、この店のものはコテで焼印を押した上に、砂糖蜜で絵柄が描かれているのが特徴なんです。「梅にうぐいす」だったり「なでしこ」だったり「紅葉の風情」だったり「お月見」だったり。ですから、名前は同じでも、春と秋では違うお菓子。生菓子のような楽しさがあるんですね。
そうそう。以前、ご主人とお話をした時に、私が「三味胴は外に出してしばらく置いといて、湿気てやわらかくなったのが好き」と少々お行儀の悪い話をしたら、「実は、僕も」、と。うれしかったなー(笑)。そして「湯飲み茶碗の上にのせて湯気でしめらせてから食べるというお客様もいらっしゃいますよ」と“上級”情報も教えてくれました。なーるほどね。
文化元年という江戸文化が爛熟した時代に創業したお店らしい、華やかさと、繊細さと、親しみやすさと。これぞ銀座の粋でしょう。

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