【第四十一回目】
秋色庵大坂家:桜といえば、「秋色」
こんにちは、老舗のコンシェルジュです。
観光で来日する外国人が、日本で食べたいと思っている和食は寿司、蕎麦、すき焼き……あたりなんだそうですが、リピーターになると、和菓子に注目する人が多いのだそうです。お菓子に季節や風景や物語を反映するという日本のお菓子の作り方は、世界にあまり例がなく、その文化性が魅力なんでしょうね。

ところで、日本の春といえば「桜」。そして、桜のお菓子といえば……実は、素敵な物語を持つお菓子があるんです。そのお菓子を作っているのが港区三田の、慶應義塾大学前にある「秋色庵大坂家」です。

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「秋色庵大坂家」の創業は元禄年間(1688~1703年)。初代が大坂から江戸に上り、明治27年までは日本橋小網町に店を構えていました。しかし、火事や地震や、戦災に何度も遭って、現在の地に移転したのが昭和の初め。店がつむいできた長い歴史の間には、苦難の時代もあったんですね。

さて、この店と桜のかかわりですが、お話の主人公は、この店のご先祖さまで、元禄時代を生きた1人の少女です。
少女は近所に住んでいた有名な俳人・宝井其角に俳諧を学び、「秋色(しゅうしき)」という号を名乗っていましたが、13歳のときに詠んだ句「井戸端の 桜あぶなし 酒の酔」が親王さまの目に止まって、これが大評判になりました。
さらに、老中の屋敷に招かれた日の帰路、下賜された籠を途中で降り、お付きの者として同行した父親を乗せたことで、秋色の親孝行は江戸中の話題となり、講談になり、人気浮世絵師が錦絵に描くまでになったのです。

彼女の名前をとった名物の秋色最中(しゅうしきもなか)は、日本初の三色最中として知られ、いまも栗餡、黒糖餡、小倉餡の3種が販売されています。また、湯をそそぐだけで手軽に作れる秋色汁粉(しるこ)は、餡も皮も上品な味わい!と、こちらも人気!
心やさしき天才少女は、いまもこの店を見守っているんですね。
桜の時期も、“秋”色。
上野公園の清水観音堂の脇には、現在9代目の「秋色桜」が春には可憐な花を咲かせます。
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