【伊場仙】
◆うちわの役割◆
 うちわ(団扇)が、何のために作られたのか、ご存知ですか? パタパタとあおいで風を送り、暑さをしのぐため……? いや、それがどうも違うようなのです。
 奈良・高松塚古墳の壁画に、うちわ状のものを持った女性が描かれています。学問的には円翳(かざし、まるは)、円羽などと呼ばれ、儀式のために高御座についた天皇の顔を隠すために女官が使用したとされています。これが平安朝になると、女性の扇につながっていったとも言われています。
 ところが、「うちは」という言葉の語源を考えますと、もう一つの意味が生まれてきます。つまり、「うち」「はらう」、悪霊やけがれを打ち払う目的で使われたのではないか、と。
実際、伊勢神宮・内宮の別宮である伊雑宮(いざわのみや)の御田植式では、神が降りてこられるときの目印・依代(よりしろ)とされる「太一」と書かれた巨大なうちわが立ちますし、全国各地の祭りでも御輿を大うちわであおいで、ワッショイワッショイとやっています。
 さて、高松塚古墳の壁画に描かれた彼女は、あのうちわをどう使ったのでしょう。ずっと気にかかっています……。
うちわ・扇子
伊場仙
●中央区日本橋小舟町4-1
●03(3664)9261

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