【第三十一回目】
江戸屋:大事な洋服やお肌に、上質のハケ&ブラシ
こんにちは。老舗のコンシェルジュです。
先日、テレビを見ていて知ったのですが、イギリス紳士は、背広をクリーニングに出すなんてことはしないんだそうですね。いい背広はクリーニングに出すと型崩れするし生地が痛むので、背広を着たあとはブラッシングをして風を通してからしまえば、いつまでも風合いが変わらず、長持ちするのだとか。
もちろん、湿度の低いイギリスならではの話で、汗をかきやすい湿度・温度の高い日本で同じわけにはいかないようですが、いい洋服を大事に、長く使うイギリス紳士のライフスタイルに、ブラシは欠かせない小道具だったんですね。
それを知って私も、ジャケットを着た日には、家に戻ると早速ハンガーにかけ、布目に沿って、上から下へとブラッシング。そこで使っているのが「江戸屋」のブラシです。
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江戸屋は、享保3年(1718)創業という歴史のあるお店で、その昔は将軍家おかかえの刷毛師さん。大奥の女性たちも、この店のはけでお化粧をし、この店のブラシで長い髪をといていたんでしょう。その後、市中に店を出すことがゆるされ、屋号もいただいて一般の人たちにも販売するようになったのだそうです。

31-b 以来、現在まで、職人さんを育て、技術を伝え続けて、まもなく300年。扱う品は、紅筆やチークブラシなどの化粧用のほか、ヘアーブラシに歯ブラシ、洋服ブラシ、そして工業用の大きなハケやブラシまで3000種類以上。店内に足を踏み入れると、壁面の棚に商品がぎっしり。天井からも、はけやブラシが吊り下げられていて圧巻の光景です。
デパートの催事に出展することもしばしばありますが、本店は趣きある外観を持つ、“建築探偵”垂涎のたたずまいなので、一度訪ねてみてはいかがでしょう。しゃれたショーケースなどはありませんが、丁寧な説明を受けながら紅筆1本から買うことができます。
たとえば、リス毛を使った最高級の頬紅などはビロードのような肌触りで、ひととはけで頬紅が肌の上にふわりとのり、色がきれいに広がります。柔らかいだけなく、適度なハリと絶妙なコシがあるからで、これも長い歴史が培ってきた技が生み出しているんですね。
使えば、その差、歴然。きっとお気に入りの、1本になりますよ。
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