【菊寿堂 いせ辰】
◆心を癒す千代紙雛◆
今から120年前のお話です。明治33年(1900年)の4月に、東京で初めて個人が所蔵している時代雛の展示会が催されました。好事家が自慢の雛を持ち寄って公開したもので、2日間で500人ほどの来会者があったと申します。
3代目の書付けによりますと、元禄年間の時代雛から象牙製や陶製の斬新なものまで、それは見事な雛が並んだようで、主催者や参会者たちの優雅な太平ぶりは、日露戦争前夜の鬱屈した時代に対する、市民のささやかな抵抗だったとも思われます。
 当店は江戸千代紙や江戸の張子などを取り扱っておりますが、なかでも、お雛さまに関連する商品の人気は今も昔もかわりません。1枚の千代紙に全国の名物雛を集めて描いたものや、千代紙を巻いて作った千代紙雛や張子雛などは、いかにも春がきたと思わせる、ほのぼのとした風情です。こうしたお雛さまは海外へ行かれる人がお土産にされることも多いようで、雛まつりの時期を過ぎてもご要望がございます。
 日本の美や優しさを伝える江戸千代紙。これからも生活に彩りを添える愛らしい江戸の文化を、お伝えしていきたいと思っております。
江戸千代紙
菊寿堂 いせ辰
●台東区谷中2-18-9
(地下鉄千駄木駅から徒歩5分)
●03(3823)1453

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