<大江戸広辞苑>【わ行】
【わ】ワンデイ・トリップ
江戸っ子はハイキングが大好き。酒や弁当をたずさえて、家族や仲間と一緒に実によく出かけています。『四時遊観録』や『江都近郊名勝一覧』といったガイドブックも盛んに発行されました。
年の初めのハイキングは梅見。江戸一番の名梅とうたわれたのは亀戸梅屋敷。隅田川沿いの寺島村や蒲田村も、梅の名所でした。梅見はウグイスの初音聴きも楽しみでした。
春は、なんといっても花見。名所は上野のお山、王子の飛鳥山、隅田川堤、品川の御殿山、そして吉原などなど。雛祭りには、桃見や桜草摘みにもでかけました。
端午の節句の頃ともなると、薬草摘み。摘んだ薬草は干して煎じ薬にしたので、一挙両得の行楽でした。そして、潮干狩り。今では信じられませんが、品川の海岸でハマグリがざくざくとれたそうです。新緑ツアーやバードウオッチングも盛んでした。
夏は、隅田川での川遊びや舟遊び、夜には花火。新宿区落合を流れる妙正寺川では、ホタル狩りも楽しみました。
秋は月見としゃれこんで富岡八幡や飛鳥山へ。紅葉の名所といえば、下谷の正燈寺と品川の海晏寺(かいあんじ)。菊見なら巣鴨、染井、駒込あたりまで足を伸ばし、ほかに芋掘り、栗拾い、茸狩りといった収獲付きの行楽へもでかけました。
冬は本所や向島へ枯野を見にでかけ、雪が降れば隅田川堤や上野の東叡山、湯島あたりに雪見に行き……。
景色を愛で、現地で一句ひねり、道中では駄洒落を楽しみながらの行楽は、お金のある無しに関係なく、才覚とユーモアでいかようにも楽しめる大人の娯楽。「江戸の歳時記」を参照しながら、江戸っ子と一緒に、ワンデイ・トリップを楽しんでください。
年の初めのハイキングは梅見。江戸一番の名梅とうたわれたのは亀戸梅屋敷。隅田川沿いの寺島村や蒲田村も、梅の名所でした。梅見はウグイスの初音聴きも楽しみでした。
春は、なんといっても花見。名所は上野のお山、王子の飛鳥山、隅田川堤、品川の御殿山、そして吉原などなど。雛祭りには、桃見や桜草摘みにもでかけました。
端午の節句の頃ともなると、薬草摘み。摘んだ薬草は干して煎じ薬にしたので、一挙両得の行楽でした。そして、潮干狩り。今では信じられませんが、品川の海岸でハマグリがざくざくとれたそうです。新緑ツアーやバードウオッチングも盛んでした。
夏は、隅田川での川遊びや舟遊び、夜には花火。新宿区落合を流れる妙正寺川では、ホタル狩りも楽しみました。
秋は月見としゃれこんで富岡八幡や飛鳥山へ。紅葉の名所といえば、下谷の正燈寺と品川の海晏寺(かいあんじ)。菊見なら巣鴨、染井、駒込あたりまで足を伸ばし、ほかに芋掘り、栗拾い、茸狩りといった収獲付きの行楽へもでかけました。
冬は本所や向島へ枯野を見にでかけ、雪が降れば隅田川堤や上野の東叡山、湯島あたりに雪見に行き……。
景色を愛で、現地で一句ひねり、道中では駄洒落を楽しみながらの行楽は、お金のある無しに関係なく、才覚とユーモアでいかようにも楽しめる大人の娯楽。「江戸の歳時記」を参照しながら、江戸っ子と一緒に、ワンデイ・トリップを楽しんでください。
【ゑ】江戸開府300年を、どう祝ったか?
平成15年すなわち2003年は、徳川家康が幕府を開いて(1603)ちょうど400年目。さまざまな催しが企画されていますが、では、江戸開府300年のときは、どうだったのでしょう。
江戸開府から300年というと1903年ということになりますが、祝賀の催しが行われたのは、徳川家康が江戸に入った年(1590年)から数えて300年を迎える年の前年、1889年(明治22年)でした。
その名も「東京開府三百年祭」。この年は2月に大日本帝国憲法が発布された年でもありましたが、同年の8月26日に、上野公園で盛大な催しが開かれたのです。
イベントの企画者・賛同者は、前島密ら旧幕臣を中心に、実業界、芸能界、政治家など各界の有力者の面々。委員長には榎本武揚、委員には政治家をはじめ渋沢栄一、岩崎弥之助、大倉喜八郎らの実業家も顔を揃えました。
入場券は1枚1円。芝生の広場には各国の旗章が上げられ、来賓席は江戸城の宮殿を模した装飾。江戸町火消しの名残をとどめた消防夫のはしご乗り、猿若狂言、競馬、獅子手古舞、近衛軍楽隊の奏楽、鍵屋の花火など、にぎやかな催しが続きました。また、このイベントとは別に、都内各所でも様々なお祝い行事が行われたようです。
こうして「東京開府三百年祭」は盛大に幕を閉じました――と話は終わりたいところですが、もうひと言。祝典の背景には、失われつつある江戸への回顧と、旧幕臣たちの鬱積した感情があったというのが、このお話のオチとなります。
【を】女が少ない江戸の町
江戸の町は、江戸初期の頃はもちろん中期になっても、極端に男が多い町でした。
享保18年(1733年)の人口調査によると、江戸の町民53万6000人のうち男性は34万人で、女性は19万6000人。実に町民の63%が男性でした。これは、労働者や露店の主人などはもとより、大きな商家も奉公人のほとんどすべてが単身の男子で、いわゆる男所帯だったからです。しかも、この数字は町方だけの人数で、約50万人といわれる武家の人口は入っていません。
その武家はというと、これまた参勤交代の武士の大多数が単身赴任。単純計算すると、この時期の江戸には男性が84万人、女性が19万6000人いたことになります。男性が女性の4倍以上! 江戸は、圧倒的に「男の町」だったのです。
この極端な男女人口比率は、江戸後期の天保年間(1830~44)頃からようやくその差がせばまってきますが、それでも江戸は男だらけの町でした。現代のテレビ時代劇には、ちょっと女性が登場しすぎかもしれませんね。
江戸っ子の「宵越しの金は持たない」という気性も、町に漂う「火事と喧嘩は江戸の華」といった荒っぽい空気も、異常な男女比率の社会のなかで男性のストレスが生んだ産物だったといえるかもしれません。
享保18年(1733年)の人口調査によると、江戸の町民53万6000人のうち男性は34万人で、女性は19万6000人。実に町民の63%が男性でした。これは、労働者や露店の主人などはもとより、大きな商家も奉公人のほとんどすべてが単身の男子で、いわゆる男所帯だったからです。しかも、この数字は町方だけの人数で、約50万人といわれる武家の人口は入っていません。
その武家はというと、これまた参勤交代の武士の大多数が単身赴任。単純計算すると、この時期の江戸には男性が84万人、女性が19万6000人いたことになります。男性が女性の4倍以上! 江戸は、圧倒的に「男の町」だったのです。
この極端な男女人口比率は、江戸後期の天保年間(1830~44)頃からようやくその差がせばまってきますが、それでも江戸は男だらけの町でした。現代のテレビ時代劇には、ちょっと女性が登場しすぎかもしれませんね。
江戸っ子の「宵越しの金は持たない」という気性も、町に漂う「火事と喧嘩は江戸の華」といった荒っぽい空気も、異常な男女比率の社会のなかで男性のストレスが生んだ産物だったといえるかもしれません。
【ん】参考文献
●甦る江戸文化(西山松之助著/NHK出版)
●江戸東京学事典(小木新造ほか編著/三省堂)
●宮中歳時記(入江相政著/TBSブリタニカ)
●総合資料 日本史(浜島書店編集部編著者/浜島書店)
●日本のさくら(財団法人 日本さくらの会)
●花火―火の芸術(小勝郷右著/岩波新書)
●花火うかれ(丸玉屋・丸玉屋小勝煙火店監修/日本交通公社)
●つい誰かに話したくなる雑学の本(日本社/講談社+α文庫)
●江戸たべもの歳時記(浜田義一郎著/中公文庫)
●百万都市江戸の生活(北原進著/角川選書)
●江戸商売図絵(三谷一馬著/中公文庫)
●江戸美味い物帖(平野雅章著/廣済堂出版)
●江戸食べ物誌(興津要著/朝日新聞社)
●東京雑学辞典(毎日新聞社編/毎日新聞社)
●桜をたのしむ(財団法人 林業科学技術振興所編/林業科学技術振興所)
●江戸東京物語(新潮社編/新潮文庫)
●お江戸風流さんぽ道(杉浦日向子編著斜線世界文化社)
●旧暦はくらしの羅針盤(小林弦彦著/NHK出版)
●植物と行事(湯浅浩史著/朝日新聞社)
●根も葉もある植物談義(岩槻邦男著/平凡社)
●食の万葉集(廣野 卓著/中公新書)
●植物ことわざ事典(足立輝一著/東京堂出版)
●歴史と風土(司馬遼太郎著/文春文庫)
●お台所メモ(寺尾宗冬著大阪書籍)
●茶ダイジェスト(社団法人 日本茶業中央会議)
●お茶と日本人(入間市博物館発行編集)
●町屋と町人の暮らし(平井聖監修/学習研究社)
●地震と噴火の日本史(伊藤和明著/岩波新書)
●江戸東京博物館総合案内(江戸東京博物館編/日本放送出版協会)
●お言葉ですが…1・2・3・4(高島俊男/文春文庫)
●天気の辞典(新井重男/三省堂)
●江戸東京学事典(小木新造ほか編著/三省堂)
●宮中歳時記(入江相政著/TBSブリタニカ)
●総合資料 日本史(浜島書店編集部編著者/浜島書店)
●日本のさくら(財団法人 日本さくらの会)
●花火―火の芸術(小勝郷右著/岩波新書)
●花火うかれ(丸玉屋・丸玉屋小勝煙火店監修/日本交通公社)
●つい誰かに話したくなる雑学の本(日本社/講談社+α文庫)
●江戸たべもの歳時記(浜田義一郎著/中公文庫)
●百万都市江戸の生活(北原進著/角川選書)
●江戸商売図絵(三谷一馬著/中公文庫)
●江戸美味い物帖(平野雅章著/廣済堂出版)
●江戸食べ物誌(興津要著/朝日新聞社)
●東京雑学辞典(毎日新聞社編/毎日新聞社)
●桜をたのしむ(財団法人 林業科学技術振興所編/林業科学技術振興所)
●江戸東京物語(新潮社編/新潮文庫)
●お江戸風流さんぽ道(杉浦日向子編著斜線世界文化社)
●旧暦はくらしの羅針盤(小林弦彦著/NHK出版)
●植物と行事(湯浅浩史著/朝日新聞社)
●根も葉もある植物談義(岩槻邦男著/平凡社)
●食の万葉集(廣野 卓著/中公新書)
●植物ことわざ事典(足立輝一著/東京堂出版)
●歴史と風土(司馬遼太郎著/文春文庫)
●お台所メモ(寺尾宗冬著大阪書籍)
●茶ダイジェスト(社団法人 日本茶業中央会議)
●お茶と日本人(入間市博物館発行編集)
●町屋と町人の暮らし(平井聖監修/学習研究社)
●地震と噴火の日本史(伊藤和明著/岩波新書)
●江戸東京博物館総合案内(江戸東京博物館編/日本放送出版協会)
●お言葉ですが…1・2・3・4(高島俊男/文春文庫)
●天気の辞典(新井重男/三省堂)
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